市立(いちりつ)高校にまた卒業の季節がやってきた。柳瀬さんをはじめ仲のよかった先輩たちが巣立っていく。そんな三月の放課後、秋野麻衣が不可解なものを見たと相談に。真っ暗なCAI室で鍵をかけ、誰かが電源も入れずパソコンで何かしていたらしい。どうやら校内八番目の七不思議、神出鬼没の「兼坂(んねさか)さん」と判明し、葉山君たちは真相解明に奔走するが……。〈市立高校シリーズ〉最新長編。著者あとがき=似鳥鶏
内容紹介引用元:東京創元社「卒業したら教室で」ページ
URL:http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488473082
ようこそ、シュガーです。
今回は私の好きな小説シリーズの新刊が出たので、読んだ感想を書いてみます。
「卒業したら教室で」は似鳥鶏さんの手がける「市立高校シリーズ」の第7作品目。
前作「家庭用事件」から約5年ぶりの新刊ですか? 待ってました。
この「市立高校シリーズ」は、ジャンルで言うといわゆる学園ミステリーとなります。
主な登場人物は、主人公で語り手の葉山くん。
葉山くんの先輩で、おちゃめな演劇部の柳瀬さん(女性)。
葉山くんの先輩で、探偵役をすることが多い伊神さん(男性)。
伊神さんは既に高校を卒業しています。
その他、伊神さんの妹や葉山くんのクラスメイトが数人出る、みたいな感じです。
私がこのシリーズを好きになった要因として、ミステリーの部分が面白いのはもちろんですが、伊神さんや柳瀬さんといった、葉山くんの周りの登場人物が魅力的だというところが大きいです。
伊神さんは、観察力や推理力が高いですが、他人やまわりへの配慮に欠けているという側面を持っています。
とはいいつつ、最終的にはやさしさも持ち合わせているというのが伊神さんの素敵なところ。
柳瀬さんは、演劇部に所属しているだけあって演技力が高く、また頭の回転も速いので、葉山くんが調査をしていく中で、機転を利かせて手助けをしてくれます。
葉山くんに好意を寄せているかのような発言も多く見られますが、葉山くんはそれを本気か冗談か判断しかねている……と。
そんな2人の先輩に振り回されつつ動いていく葉山くんという構図が読んでいて楽しいんですよね~。
で、本編です。
柳瀬さんの卒業も近づくころに、学校に伝わる7不思議の8番目についての話を聞き、調査していく葉山くん。
伊神さんの力を借りつつ1度解決するのですが、どこか違和感が残る結果に。
その正体を考えていくうちに、見えてくるものがあったり、シリーズ通しての重要人物である伊神さんについて明かされることがあったりという展開になっており、終始目が離せませんでした。
今回は卒業シーズンということもあって、柳瀬さんが卒業してしまい、ある意味では閉ざされた社会である学校から、大人の社会に出て行ってしまうことに寂しさを感じてしまいました。葉山くんも同じように感じていたように思います。
少し切ない気持ちになりながら読み進めていくと章のタイトルが「12年後」や「異世界」となっている、予想外のお話の進み方をするので驚きました。
(目次を見ればわかることなのですが、見落としていました)
「あれ? コレ市立高校シリーズだよな?」と一瞬考えてしまいましたよ。
あまり言及するとネタバレが近づくのでこれ以上は書きませんが。
ただ、やっぱりプロの作家はすごいもんで、この一見して繋がらなそうな言葉たちを使って見事に1つのお話を読ませてくれました。すごい。ぜひこの読書体験をしてもらいたい。
葉山くんと柳瀬さんの関係性についても触れられています。ただ、明記はされておらず、あくまでほのめかす程度になっており、判断が難しい。
「これから先は読者の想像にお任せします」なのか、それとも続刊で明かされるのか……。
気になりすぎて新刊が出たばかりなのに既に続きが読みたくて仕方なくなっています、
あぁ、次は何年後に発売されるんでしょうか。それまでは生きるぞ!笑
さてこの市立高校シリーズですが、「氷菓」から始まる米澤穂信さんの「古典部シリーズ」や、同じく米澤さんの「春期限定いちごタルト事件 」から始まる「小市民シリーズ」が好きな人や、「午前零時のサンドリヨン」から始まる相沢沙呼さんの「酉乃初の事件簿シリーズ」などが好きな人は間違いなく楽しめるので、1回読んでみてほしいです!
学生の方は今の自分のと重ねて楽しめるかもしれませんし、社会人の方は青春時代を思い出して楽しめるのではないでしょうか?
まずは1巻目の「理由あって冬に出る」からどうそ。
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参考までに古典部シリーズ、小市民シリーズ、酉乃初の事件簿シリーズの1巻も紹介。
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みなさんの学園ミステリーのおすすめ作品があったら教えてください!
それでは、バイバイ!